ウエイト考

中田さんからコメント頂いたので練習日誌にて共有しておきます。



「ウエイトは翌日歩けなくなったり熱が出る(限界までやると出ます)までやるよりは、「ちょっと痛いな」とか「バイクが前に進まないな」ぐらいが良いです。
そうすればバイクトレーニングを阻害しないので両方伸びて行けるからです。


筋肉の成長因子は大きく分けて2つです(諸説あります)


1.Mechanical tension
機械的刺激 要は高重量を持つことで筋肉に刺激を与えて成長を呼び起こす
5−7回で限界

2. Metabolic stress
生理学的刺激 科学的ストレスとも言います。
これは筋肉中を乳酸でいっぱいにして、もう動かなくすることで成長を呼び起こす方法です。

筋肉がパンプアップされて膨れ上がる方法ですね。


15−20回繰り返せる重さで20回行って、ラックにウエイトをかけずに5−10秒休んでまた限界まで繰り返し、5回ぐらいしてイッパイになったらまた5−10秒休憩、また限界まで を合計30−50回繰り返します。

無茶苦茶キツイですが効果は必ずあります。

2の生理学的刺激をする注意点としては
疲労が残るので中4日以上は空けること
・途中レストを入れるときはスクワットだと脚を伸ばしきってロックさせず150-160°あたりで止めること。それにより膝関節に負荷がかからないように出来るし、負荷を抜かずに済む。
・150-160°で止めるのがあまりにキツければ一度ラックに戻す。
・3度(合計3日)程度を1クールと考え、その後は通常の高重量に戻す。
あたりがポイントです。」


・12/7追記

生理学的刺激について、1セットで終わっていいの?というご質問を頂きました。それについて中田さんにお尋ねしたところ、以下の回答をいただきました。


「通常1セットです。
どれぐらい翌日筋肉痛があるかで判断しますが、1セットで翌日バリバリ筋肉痛で5日ぐらいして回復するならOK。

もし刺激が足りないなら、WUセットをやって、5ー8回ぐらいでイッパイの少し手前(あと1回出来る程度)で止めるセットを1-2セット追加してから、高回数セットを行います。これを予備疲労と呼びます。

あくまで高回数セットは1セットで追い込むことに意味があります。足を疲労物質で満たすことに意味がありますからね。

こうやって高重量低回数と低重量高回数を組み合わせる方法なら高回数セットの期間に最大重量を落とさずに済みます。

以前も書いたかもしれませんが、高回数セットは3-4セッション、概ね3週間で一旦やめて、また3x10のような通常のセッションに戻します。

こうやって高重量低回数、低重量高回数(さらには中重量中回数に分ける方法もある)を組み合わせることで、筋肉と脳への刺激を変えて成長させます。
これにはケガを防ぐ効果もあります。

また例えば低重量の時はバイクは高強度。

高重量の時はバイクは低強度。

といった感じでバイクトレーニングとのバランスも取ると良いです。

こうやって自身に最も合う方法を見つけて行くことで、更なる成長が望めます。

色々工夫してみて下さいね。」



・以下はこれからウエイトを始める人向けの内容



「ウエイトトレーニングの鉄則は「最初の3週間は軽めに!」

筋肉痛が酷すぎて動けなるほどやってはいけません。そうするとバイクのトレーニングが出来なくなってしまいます。

本来ウエイトはシーズン終了後から冬の間に取り組むものです。
今の時期から取り組むなら、補強として、自転車のトレーニングを阻害し過ぎないように行うべきです。

(1)ウエイトトレーニング開始時の注意
最初はフォームづくりのつもりでシャフトだけでも良いぐらいです。それでも充分良い効果があります。ウエイトは火曜日か、土曜日・日曜日あたりに行うのがおすすめです。

(2)バイクトレーニングのタイミング
バイクトレーニングを3時間以上やったなら4時間以上離して行ったほうが効果が高いです。

なぜなら持久的なバイクトレーニングは体を痩せる方向(カタボリック=異化)に向かせるので、そのような状態でウエイトトレーニングを行っても血中アミノ酸が少なく筋肉を増やす(アナボリック=同化)状態になりにくいからです。

(3)栄養摂取のタイミング
レーニング前後にタンパク質を補給したほうがトレーニングの効果は高くなります。
(出来ればトレーニング前はアミノ酸、トレーニング後1時間以内にプロテイン

(4)時間とお金がない場合は?
4時間あけて二部練を出来る日ばかりではないと思います。
そういった場合はバイクトレーニングと連続して行っても良いです。その場合バイクとウエイトトレーニングの間にタンパク質を取るだけでも筋肉が付きやすくなる可能性があります。

プロテインアミノ酸を買えない場合はゆで卵でもOKです。

もし卵アレルギーがあれば、下記を参考に食事を改善してみてください。
https://www.meiji.co.jp/sports/savas/lecture/n4_4.php

(5)お金があっても
私はあまりサプリメントに多くのお金を注ぎ込むのはお勧めしません。月に数万円も注ぎ込むのはナンセンス。

基本的なプロテインが第一。
他には出来ればアミノ酸、必要に応じてビタミン剤ぐらいで充分だと思います。

また海外製の素性の知れないサプリメントは絶対買ってはいけません。
ドーピング物質が含まれていたり、何の価値もない不純物が含まれてる可能性もあるからです。

(6)その他
お腹が弱い選手は整腸剤を飲むのをお勧めします。
アサヒビールエビオス強力わかもとなどです。

お腹の調子を整えるのは調子を安定させ、トレーニング効果も上がります。

価格も安いので保険として飲んでも良いでしょう。」




・次はツール・ド・北海道の連絡用LINEグループに流れていた内容ですが、下級生中心に参考にしてみてください。


「(1) ビッグギアについて

夏のトレーニングから入れているビッグギアは冬の間は特に強調して取り組むべきです。
パワー=トルク x スピード
ですから、トルクを上げるための筋力アップをすればパワーが上がる可能性が高いです。
またレース後半や勝負どころだとギアをかけてトルク勝負になるので筋力を上げると結果的にレースでの持久力が上がる可能性もあります。

・頻度 週に1回程度
・タイミング 疲労していない日。例えば週末の火曜日から回復しつつある火曜日など
・ウエイトトレーニングとの関係 

持久力は既にあり特に筋力をつけたい選手

下級生
火曜日に脚のウエイト、金曜日にビッグギア 土曜日合同練習
もしくは火曜日に全身のウエイト、金曜日にビッグギア 土曜日合同練習
まだ体力、脚力ともに上級生に及ばないので土曜日に筋肉痛であることを避けたいため。
また一日でビッグギア・ウエイトの両方を行うと体力的にボリュームが多すぎて筋肉がつかない。


上級生
火曜日にビッグギア+脚のウエイト、 金曜日に上半身のウエイト
もしくは火曜日にビッグギア、金曜日に脚のウエイト
経験のある上級生は一日で両方をこなしても大丈夫なはずだし、多少筋肉痛でも合同練習はこなせるため。
ちなみに一日で行う場合は午前中にウエイトトレーニングを行って、午後にビッグギアが出来ると理想です。
逆しか出来ない場合はバイクとウエイトを4h以上離したほうがIGF-1, 男性/成長ホルモンの分泌がよく筋力アップに有効だと言われています。



やらない方が良い組み方
☓1.ビッグギアとウエイトは連続した日で行わない方が良いです。
例えば火曜日脚のウエイト、水曜日ビッグギア
ウエイトで筋破壊した翌日にビッグギアをしてもトルクが出ないので「やり損」になるからです。

X2. 長距離の翌日のビッグギアor 脚のウエイト
上と同じ理由で疲れた脚でウエイトを行っても筋肉が発達しません。
フレッシュで回復力もある日に行うこと。


出来れば筋トレ前にプロテインを飲みましょう。なければゆで卵。決して空腹で行わないように。

ビッグギアは概ね8-12週間ぐらい継続すると、見違えるほど重いギアが回せるようになります。
その日を楽しみに行って下さい。

またその頃になると、時折スタンディングスタート(ゼロ発進のフルもがき10-15秒程度)も入れていったほうが良いです。
これはトルクとともにレッグスピードを高めてくれます。 要するにトルクxスピードの両方をアップする統合練習になります。」



・少し前後しますが、こちらはウエイトとビッグギアの話。


「イメージとしてはウエイトトレーニングでつけた筋力をビッグギアで自転車上で発揮できるように変換していく感じです。

またウエイトをすることで「大きな筋肉からパワーを出す。体の中心に近い場所から動かす」という動きを学ぶことが出来ます。

人間の筋肉の中で大腿四頭筋・臀筋・ハムストリングスは大きな筋肉です。

ですから腓腹筋などを使って小手先のペダリングをするよりよほど大きな力を出せますし、その分疲労が少なく持続力もあります。

———
多くの選手は臀筋を使うのが苦手です。
目で直接動き見えないのと、普段あまり使わないからです。

ウエイトトレーニングでスクワット・デッドリフトは自転車選手が最初に習得すべき種目です。

それらが出来てきたら(概ね体重を10回チーティングを使わずに上げれる)、ランジやステップアップ、片足のレッグプレスなど片足で出来る種目を取り入れていきます。

ちなみに動きを習得する(特定の筋肉を意識的に動かす)のはウエイトトレーニングで行って、自転車に乗ったらあまり意識せずにスムーズさに注力したほうが良いです。

どこか特定の筋肉を意識しすぎるとギクシャクしたペダリングになるからです。」



ウエイトのマンネリ化に悩んでいる人、そもそもウエイトに悩んでいる人は参考にしてみてください。


*ビッグギアの基本メニュー(MS=Main Set)
ビッグギアってどうするの?と思う人は参考にしてください。私は基本的にビッグギア@江文or裏途中、SFR@途中、帰りしなどんぶりスプリントを行なっていました。時間がない時は将軍塚に行っていましたが、ここだとスプリントが出来なかったです。短い時間で終わるメニューですが、かなりキツイです。



Big gear repeats
WU: ウォームアップ 15-30分 Z2(000w-000w) 軽いギアから始めて足を温める。 3 x 1minの高回転走で足を起こそう。

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MS
Big gear repeats
(6-8) x 1min 0-20rpmからスタートして全力で踏んで50-60rpm程度になるギアで1分間 
レストは1-2分(下ったら引き返す)
シッティングとダンシングを1本ずつ交互に行う。
毎回ハンドルを持つ場所を変える

1本目シッティング 上ハンドル、 
2本目ダンシング ブラケット、
3本目シッティング ブラケット
4本目ダンシング  下ハンドル
5本目シッティング 下ハンドル
6本目ダンシング ブラケット
7本目シッティング 上ハンドル、 
8本目ダンシング ブラケット、
地形:5-10%の登り

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MS2
3 x 30秒 高回転走(>110rpm)力を抜いてワットは気にせず「脚が勝手に回っている感覚」を掴もう。レストは1分
5-10分流し

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MS3 SFR(→シッティングonly)

3 x 3-6min
より長い時間のビッグギア
長さは3−6分ちょうどいい長さの丘を見つけて走ろう。
ケイデンスは50rpm +/-10rpm
しゃかりきに回すのではなくペダルの軌道に沿って常にテンションがかかるように。

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MS4: ゴールスプリント
下りから登りになる地形(通称どんぶり)を見つけて全力スプリント15秒

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CD
10分間 アクティブリカバリーレベルで足をほぐそう。


p.s.
中田さんからはコーチング期間に様々なことを教えていただいたので、時間ある時に順次まとめてアップします。