「レース経験が足りない」について思うこと

部のOB会誌やレースレポートの中で頻繁に「レース経験が足りない」という内容を目にします。


例えば…

・位置取りができなかった→レース経験が足りない
・落車に巻き込まれた→レース経験が足りない
・勝負時に脚がなかった→レース経験が足りない
etc…


皆よく書いていますね。

大体その後に、「なのでこれから積極的にレースに出場していきたい」と、こう続くわけです。



最近、こうした内容を目にすると1つの疑問が湧いてきます。


「それならあと何レース出ればレース経験は足りるの?」


おそらくそれに対する答えの趣旨としては「いくつかは分からないけど、レース中思い通りに動けるまで」といった具合でしょうか。



レースの数をこなすというのは非常に良いことだと思います。集団内の流れや選手間の意思疎通方法など、実際にレースの中でしか学べないこともあると思いますし。
ただ、「レース経験が足りない」と書いている人は往々にして、レースの質が低い、もっと言うとレースでの学びの質が低いのではないかな?と思っております。




少し話は逸れますが、私は高校入学直後のオリエンテーションで、「予習・授業・復習の黄金サイクル」を回せば京都大学でも東京大学でも受かると教わりました。予習で予め学ぶべき点を洗い出し、効果的に授業を受け、復習で内容を定着させる。素直な福原少年(15)はこれを3年間実践し続けて京都大学に入学しました。


私が言いたいのは、レースでも大学受験と同じことが言えるのではないか、ということです。
特に「レース経験が足りない」と言う人たちは「予習」の部分が圧倒的に足りていないと思います。

ではロードレースにおける予習とはどのようなものでしょうか。

これに関しては様々なことがあり、私も完璧には程遠いとは思いますが、それでも参考にはなると思うのでいくつか例示してみます。


①コースプロフィール
②注目選手とその番号
③当日のコンディション(天気・気温・風速・風向き・湿度etc…)
④レース展開
⑤スタートまでのタイムスケジュール


①コースプロフィール

さすがに自分の走るコースが一切分からない状態でスタートする人はいないと思います。
私は普通YouTubeとかでコース動画を見て概観をつかみ、あとは試走で細部を確認します。砂利、障害物、道路の亀裂、コーナーのキツさ…。色々見るところはありますね。特に危険箇所は確認しておきましょう。



②注目選手とその番号

これ、弱い人ほど見ていない気がします。レース前から強い選手なんて大体分かっているのだから、ちゃんとその選手を見ておきましょう。強い選手にかじりついていれば色々見えてくると思いますよ。そしてあわよくばゴール直前で捲ってしまいましょう!
ちなみに私は3回生5月のRCS修善寺京産の中井選手に必死で齧り付いたことがありますが、あれは良い勉強になりました。位置取り、コーナリング、ギア選び、アタックのタイミング…。もちろん千切れましたがね笑。



③ 当日のコンディション(天気・気温・風速・風向き・湿度etc…)

天気予報を見ましょう。
学生の出場するレースはほとんど周回コースなので、①と合わせて、どこが追い風or向かい風か、とかも見ておいた方が良いです。
例えば修善寺CSCのホームストレートが追い風の時は1人でもガンガン踏まれると追いつけない可能性があるので、その手前の長者ヶ原(?)の登りは絶好のアタックポイントと化します。2018年個人ロードのパターンですね。逆にホームストレートが向かい風ならアタックポイントも変わるかもしれません。
短い周回コースのクリテリウムならもっと影響は大きいかもしれないですね。
気象情報なんてスマホで5分もあれば十分調べられるので、レース前には把握しておくことをすすめます。



④ レース展開
これは出場選手を見たり、あるいは過去のレース展開を参考にすれば良いです。プロのツアー戦ならつゆ知らず、学連レースならある程度予想できるでしょう。
もちろん思い通りにならないことも多々あるので、そこは臨機応変に。ただ、予想通りだった時に落ち着いてレースを見られます。



⑤スタートまでのタイムスケジュール
私はいつも会場入りしてからスタートするまでのタイムスケジュール表を前日にスマホで作成していました。当日はそれに従って淡々とこなすわけです。こうして準備しておくとレース直前になって焦ることが格段に減ります。
ちなみにタイムスケジュール作成の際にはある程度余裕を持たせておくと不慮の事態にも対応できます。



ざっと5つ例示しましたが、食事内容、補給のタイミングなどなど、本当はもっともっと考えるべきことがあるはずです。以前書いたビジュアライズも有効です。私も競技経験が4年足らずと短いのでよく「次はこれもしてみよう」ということが出てきます。なので予習項目はそれこそ各々のレース経験によって増やしていってほしいですね。




さて、上で「予習」の不足について書きましたが、「レース経験が足りない」という人の多くは実は「復習」も足りていないのではないか、と考えています。

「え、レースレポート書いてるやん?」と思う人もいるでしょう。そうです、みんな良くもなかった苦々しい思い出をわざわざ掘り起こしてさらけ出してくれています。その過程は必要不可欠です。ただその後が足りていない。

「復習」とはどういったことでしょうか。受験勉強に置き換えてみれば分かりますね。そう「復習」とは、同じパターンの問題が出た時に正答できる状態になることです。
つまり、同じ失敗を繰り返している時点で復習できていないわけです。復習できていないままでまたレースに出て、場所取り下手くそで勝負に絡めなくて、時には落車して、やる気無くして…。そりゃ自転車も面白くないですわ。

復習とは要するに、レースレポートで振り返ったミスを次に犯さないように練習しましょうということです。結局はここに落ち着きます。
ただ自転車を漕ぐことだけが復習ではなくて、理論を学んだり人の話を聞いたりパワーデータを見たり、様々な角度から見直してみましょう。復習の一環としてレースに出ることも当然あると思います。




あるレースに向けての「予習」と、あるレースでの「復習」を普段の練習で行えば、自ずとモチベーションも上がるのではないでしょうか。私は今までを振り返ってみてこのようにしてモチベーションを保っていました。
予習と復習の段階で色々考えて、それを実践形式で試す絶好の機会として全体練があったように思います。
「レース経験が足りない」と嘆き、多大なるコストをかけてモチベーションを下げている人たちが少しでも減ればいいなと思います。




ps.

落車や位置取りの原因をレース経験不足に求める文を読むたびに、それは弱いからでしょ、レース行ってないでちゃんと練習すれば?という思うのが私の従来の考え方であり、今もこうした考え方を持っていることは事実です。
私は15回目のレースでインカレ28位完走でしたし(初優勝したのは5レース目のトラフェ)、レースの数ばかりこなしている人を見ると何やってるの?と思ってしまうのです。


ただ実際レースは楽しいものです。一方で練習は地味で楽しくないどころか辛いこともしばしば。そういった気持ちは痛いほどよく分かります。
ただ練習しないと強くならないのは事実。そしていつぞやどこかで書きましたが、練習すれば少なくともある程度まで(インカレ完走くらい?)は強くなります。マイナースポーツで結果にもつながりやすいと思います。

少しでも楽しく練習できるようになって強くなって下さい。