夏休み しのごのいわず 美山いけ

<練習の強度と時間について>
 最近の1回生の練習について思うところがあるのでこの場を借りて書く。長くなりそうなんで先に結論から言うと、「流しめのサンダイコーって意味なくね?」である。

 時々言っているが、練習は強度×時間で考えなければならない。その観点でざっくり分けると、練習は以下の4つのマトリクスに分類される。

1高強度×長時間 2高強度×短時間
3低強度×長時間 4低強度×短時間

 もちろんそれぞれ効用は異なっていて、強くなるためのものとコンディションを整えるものがある。

 1から順番に説明する。高強度×長時間は言うまでもなく強くなるための練習だ。イメージで言うと美山に行って全ての峠をもがき倒すような感じ。ロードレースで強くなろうと思ったら週2回くらいはこういう練習で体を破壊しなければならないだろう。私の場合、週3回以上やると体が不可逆的に破壊される。頻度には注意が必要だ。岡本のように体が強いパターンもあるので、最適な頻度は体質や年齢、休養や食事によって変わってくると思われる。とはいえ、1回生は若くかつ休養の時間も長く取れ、しかも弱いから大してもがけないので、夏休みの間は2日に1回のペースで行うべきだし、できるはずだ。当面はこれをやってほしい。

 2の高強度×短時間は、追い込み方によって調整目的にもなるし強化目的にもなる。
 今丁度私がやっているのはレース前の調整目的のもので、限界までは追い込んでいない。高強度とはいえ短時間なので負荷は少ないから十分回復するし、強度をあげ刺激を入れることで調子も保てる(気がする)。レースの重要度によって調整するかどうかは変わるが、基本レース前3日くらいはこんな感じで行けば大外しはしない。
 一方、限界まで追い込むことで高強度×短時間は強化目的に変わる。授業があるときのように練習時間が取れないときは、短時間で限界まで追い込まねばならない。徹底的に、脚がついてるかどうかわからなくなるくらいまで追い込む。具体的に書くと、山中TT3本とか、将軍塚5本とかそんなイメージ。あるいはローラーで20分走数本。これらは1時間半あればこなせる。タバタにいたっては30分で全部終わる。ただし、弱いままだとどうしてももがけないし追い込めないから、夏休みの間にある程度もがけるようになるまで、高強度×長時間な練習で自分をいじめ抜いてほしい。

 3の低強度×長時間はいわゆるLSDと言われるものだ。ただし、ここでのLongとは4時間以上(できれば6時間程度)のことで、Slowってのもイメージよりずっと速いというのは知っておいてほしい。ダラダラ2時間程度走ってもほとんど強くならない。
 特に一回生はまだわからないと思うが、一回もがく能力と複数回もがく能力って違うし、またそれらの能力と長距離疲労せず乗り続ける能力ってのは、やっぱり違う。どうもこのLSDは長距離を疲労せず乗り続ける能力を鍛えるような気がしている。未だにLSD要不要に関しては諸説入り乱れ狂っているが、長距離のロードレースで活躍しようと思ったら、結局必要なんじゃないかなあというのが私の考えである。

 4の低強度×短時間はいわゆる回復走というやつだ、30分〜1時間程度汗を流して終わり。きつい練習やレースの次の日のように疲労がたまった時はこれでおしまいにしたほうが良い。よく勘違いされがちだが、練習した後に強くなるのではなく、回復した後に強くなる。

 長々と書いたわけだが、強くなるための練習なのか、それともコンディションを整えるための練習なのか、はっきりさせた上で練習に臨むべきだという点は覚えておいてほしい。例えば今週の私のトレーニングは、水曜日は強くなるため、それ以外は全てレースに向けてコンディションを整えるために行っている。
 その意味で、「流しめのサンダイコー」とか、「流しめの宇治川」というのは私からするとどうしても中途半端に感じてしまう。回復にしては長すぎるし、強くなりたいなら強度も時間が足りない。ダイエットとか、サイクリングで人間の心を取り戻す、といった別の目的があるなら話はかわるが…。調整ってのは個人差があるので難しいとこではあるが、少なくとも、その練習は強化目的なのかコンディション目的か、という視点をもって強度と時間をコントロールしていただきたい。