引カレ

―放送席、ならびにこのブログを閲覧して頂いている皆様、今回は、インカレは「引退カレッジ」の略であると主張する、牧選手に来ていただきました。まずは牧選手、ご愁傷さまでした。
「いやぁ、ほんとにタフですよ、ロードレースというのはね。本当は去年に引退カレッジを走る予定だったのですが、ちょっとした気の迷いから1年延びましてね。今年は正真正銘、そういうことなのです。」
―残り1周で赤い旗を見たその瞬間、どんな感情がありましたか。
「そうですね、自分としては珍しく諦めなかったんですけど、やはりインカレともなると甘くはなくてですね。いや、一度は諦めかけましたが、沿道の声援とコーラのお陰で心を入れ替えて頑張れたのです。ですから、小さなことでお恥ずかしいのですが、自分なりにやりきってよかったと、そう思いましたね。」
―でも、達成できなかったことも大きかったのでは?
「ええ。最後まで下手な走りのままだったなと思います。特に今年は180度ターンがありましたでしょう?あれにやられましてね。やられないようになんとかしろよ、という声もそこはかとなく聞こえますが…でも何よりね、今シーズンの自分のやり方が一番よかったのです。そもそも、足を溜めるというのは好きではないといいますか、それはそれでフラストレーションになるのです。けれどもね、あなたね、やっぱり何事にも限りがあるでしょう。今回はそれを、どうでもいい場所で使わざるを得なかったと。知らないうちに全部、足は使いきってしまうし、お金は無くなっているし、時間も過ぎているし、脳みそは退化する。もう少し、そういったプレシャスなものが無くなってゆくことに対する繊細な感覚があったらなぁ、と思うのです。あなたにもお分かりいただけるでしょう?」
―うーん、どうなんでしょう。あるんですかね、そういうの。それにしても、今回はあまり話すことがないようですね。
「ええ、何もしていませんからね。何を言っても言い訳になりますよ。8月に入って急に心身の歯車が狂って、それだけがどうしても戻らずにインカレを迎えたことだけが心残りだと、これだけお話ししておきましょう。よりによって最後の最後にね。でも、それだけセンシティブでフラジャイルで、誤魔化しも効かない。そんな自転車競技って面白いですよねぇ。そう思いません?」
―んーなんといいますか、私に言われても困るのですが…ともかく、ありがとうございました。
「おおきに。」
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美麻まで足を運んでサポートや応援をして下さった皆様、並びに、遠くから応援して下さった皆様、ありがとうございました。そしてインカレは素晴らしい大会でした。ぜひ来年も赴きたいと思います。
自身の成績は散々でしたが、遠征としては非常にハートウォーミングで心に残るものでありました。